アニメ「進撃の巨人」とドイツ語 ~その④「Bauklötze」~

アニメ「進撃の巨人」とドイツ語 ~その④「Bauklötze」~

 こんにちは、東北大学言語研究会のhiraです。ドイツ語を勉強中の工学部3年です。今まで3つ、ドイツにかかわりのあるアニメ「進撃の巨人」とドイツ語について絡めた記事を書いて参りました。今回は4回目、歌詞が全てドイツ語で書かれた挿入歌「Bauklötze」を日本語に訳していきたいと思います。題名の意味は「積み木」……ここだけ見ると「なんで?」となりますね。

 それでは皆さま、一緒にドイツ語を学んでいきましょう!

Es ist wie das Spiel mit Bauklötzen
それは積み木遊びのよう
Ich mauere mit Steinen vorsichtig
石で慎重に壁を作る
Es ist wie das Spiel mit Bauklötzen
それは積み木遊びのよう
Ich sehe meinen Ieeren Baukasten an
空の積み木箱を私は見る

 前回の「vogel im käfig」でも出てきたist wie構文が使われてますね。「~のようだ」という比喩の表現です。mauereはmauern(壁を作る)という、ドイツ語では珍しい「en」で終わらない動詞の一人称単数形です。Baukastenは組み立て部品という意味ですが、Ieeren(空の)という形容詞で修飾されているため、「積み木箱」という訳にさせていただきました。

 この部分では歌詞の意味がよくわかりません。なにが積み木遊びに例えられているのでしょう。

Du brichst meine Mauer arglos mit schmutzigen Händen
あなたは悪気もなく汚い手で私の壁を破壊する

 brechen(壊す)は二人称単数duが主語になるとbrichstという不規則な変化をする動詞です。

 壁を壊す……進撃の巨人を読んだ方なら、それが何を表すのかピンとくるでしょう。そう、ウォール・マリアを破壊し壁内に巨人を誘い込んだ超大型巨人の事です。悪気もなく、と書かれていますが、おおよそ理性など持っていないように見える巨人は、悪意もなしに人類に害を及ぼしているように見えるのでしょう。ただ超大型巨人に悪意がなかったかというと……これはネタバレなので深くは言えません。

An jenem Tag war es ein sehr feuriges Abendrot
その日はそれは焼けるような夕焼けでした
Ich versteckte die Bauklötze vor dir
私は積み木をあなたから隠す
traurige Erinnerung an meine Kindheit
私の子供の頃の悲しい思い出

 warは英語のwasにあたる、過去の動詞です。「その日」は先ほどの下りから考えるに、超大型巨人が壁を壊しシガンシナ区に巨人が入ってきたその日を指すのでしょう。そして「悲しい思い出」とあるので、この歌は壁が破壊された日を思い出す回想の歌だとわかります。

Ist das Zerstörer oder der Schöpfer?
それは破壊者か創造者か?
Mit der Glut des Hasses schwenken wir die Schwerter
憎悪の残り火と共に私たちは剣を振る
Ist das unser Schicksal oder unser Wille?
それは私たちの運命か、意志か?
Wir werden Kämpfen, bis dieser heiße Wind unsere Flügel nimmt
この熱風が私たちの翼を奪うまで、私たちは戦うつもりだ

 最後の一文について詳しく解説しましょう。ここでのwerdenは意志の助動詞、それが文末のKämpfen(戦う)と結びつき、「戦うつもりだ」という分になっております。bisが時には「~まで」という意味になる前置詞を持って、以降の「dieser~nimmt」という文章と接続されています。

 熱風……? と疑問に思う方もいれば、納得がいく方もいるかもしれません。これはおそらく、超大型巨人の体から発せられる高熱の蒸気だと思われます。物語の中で主人公たちは、かつて壁を破壊した超大型巨人と再び相まみえる機会が何度もありますが、そのたびに超大型巨人の熱波に行く手を阻まれています。

 そこからまた冒頭部分の「Es ist~」の一節が流れ、最後のサビに行きます。

Ich tun nichts in den Baukasten
私は積み木箱の中で何もしない
Ich will nichts verlieren
私は何も失いたくない
Ich versteckte die Bauklötze vor dir
私はあなたから積み木を隠す
Ich mauere wieder mit Steinen vorsichtig
私は再び慎重に石で壁を作る

 正直、最後部分の歌詞を和訳して、驚かされました。先ほどまで「戦う」と言い張っていたこの歌詞が、いきなり「何もしない」「何も失いたくない」と後ろ向きになるのですから。もしかしたらこの歌は一人ではなく、二人、あるいはそれ以上の視点から描かれてるのでは……? などと考察してみます。

 以上が進撃の巨人の挿入歌「Bauklötze」の和訳となります。進撃の巨人の世界観を、積み木になぞらえて歌われている歌でした。今回の記事、ドイツ語の記事というよりは進撃の巨人を語る記事でしたね…。(毎回そうだろ)

 次回は進撃の巨人×ドイツ語、最終回! 挿入歌「so ist es immer」を訳していきます。それでは皆さま、Auf Wiedersehen!

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