Guten Tag! 東北大学言語研究会のhiraです。このサイトではドイツ語を担当しております。前回、前々回に引き続き、本記事ではドイツ語と深い関わりのあるアニメ「進撃の巨人」について書いて行きたいと思います。
今回翻訳していくのは進撃の巨人内で使用される挿入歌「Vogel im käfig」。穏やかで神々しい前半部分と、一転して絶望的な雰囲気を漂わせる後半部分の転調が印象的な楽曲です。この音楽は歌詞の一部がドイツ語である「紅蓮の弓矢」「自由の翼」とは違い、全てがドイツ語で書かれているのです。タイトルのVogel im käfigは日本語で「籠の中の鳥」という意味です。巨人たちから身を守るため、壁の中に閉じこもった人類たちを連想させる言葉ですね。
今回はこのVogel im käfigをドイツ語から日本語に訳していきたいと思います。それでは皆様、一緒にドイツ語を勉強していきましょう!
前半部分
Der innere Reichtum der Leute ist 人々の内なる富は wie Licht bunt, durch Farbglas hereinzuscheinen 色ガラスを通して輝く鮮やかな光のようだ Das angenehme tägliche Leben ist 心地よい日々の暮らしは wie ein warmes Kerzenlicht 暖かなキャンドルライトのようだ
歌い出しの部分では「《主語》 ist wie 《補語》」の構文が使われています。「〇〇は××のようだ」、という意味の構文で、壁の中の人々の安寧な暮らしを多才な語彙で表現していますね。
Die sehr weite grüne Erde とても広く緑色な世界 Das reiche schöne Wasser 豊かで美しい水 Die grandiose Natur sorgt immer noch für ihre Kinder 大いなる自然はいつも子供たちをはぐくんでいる
これも同じく壁内での豊かな暮らしが表現されています。
Hoffentlich können wir es irgendwann verstehen いつか知れるといいな Wir gehen zur anderen Seite des Horizontes 私たちは地平線の反対側に行く Hoffentlich können wir es irgendwann verstehen いつか知れるといいな Wir gehen festen Schrittes 私たちは着実な一歩を歩む
hoffentlichの翻訳には悩まされました。まず調べて出たのが「うまくいけば」という意味の副詞でしたが、文脈にうまく合いません。もう少し深掘りして調べたところ、「~だとといいな」という願望の意味が出て来たので、そちらの方を採用しました。
ここまでが前半部分、穏やかで壮大なメロディで壁内人類の穏やかな暮らしが歌われるパートです。ここから一気に転調し、巨人たちに脅かされる人類を謳う悲壮な歌詞が紡がれていきます。
後半部分
Alles Lebendige stirbt eines Tages 全ての生き物はいつの日か死ぬ Ob wir zum Sterben bereit sind oder nicht, 私たちは死ぬ準備ができているのかどうか der Tag kommt sicher その日は必ずやってくる
「全ての生き物はいつの日か死ぬ」という強烈な文言で後半部分は始まります。死ぬ準備ができている、とは巨人たち壁外に向かい死と隣り合わせになった調査兵団の団員たちの事なのでしょう。
Ist das der Engel, der vom dämmernden Himmel hinunter flog? それは薄明の空から飛び降りた天使か? Ist das der Teufel, der aus der Felsenspalte heraus kroch? それは隙間から這い出た悪魔か?
対比的な二つの疑問文が並べられています。
Tränen, Ärger, Mitleid, Grausamkeit. 悲しみ、怒り、憐れみ、残酷 Frieden, Chaos, Glaube, Verrat. 平和、混沌、信仰、反逆 Wir werden gegen unser Schicksal ankämpfen 私たちは自分自身の運命と戦うのだろう Wir dürfen uns nicht in unser Schicksal ergeben 私たちは自分自身の運命に屈してはいけない
前半は対の意味になる単語を列挙していますね。後半ではwerden(~だろう),dürfen(~すべきだ)といった助動詞を第二位に置き、動詞を文章の末尾に置いた助動詞の構文が使われております。
Mit Trauer und Entscheidung im Herzen 心臓の中、悲しみと決意を共に zeigen wir den Willen weiterzugehen 私たちは進み続ける意思を示す Niemand darf eigensinnig seines Lebens beraubt werden 誰も自身の人生を奪われてはならない
最後の一文はdürfenが使用された助動詞の構文であるとともに、beraubt(奪う)にwerdenがくっつくことで「奪われる」という意味になった、受動文でもあります。この曲を通じ、平叙文、疑問文、助動詞、受動文を復習することができましたね。
まとめ
以上が進撃の巨人の挿入歌、「Vogel im käfig」の日本語訳となります。「紅蓮の弓矢」「自由の翼」と同じく、進撃の巨人の残酷な世界観が表現された歌詞でしたね。進撃の巨人のオリジナルサウンドトラックはapple musicをはじめ各種サブスクで聞くことができますので、皆様もお聞きになられてはいかがでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。次回は同じく全てがドイツ語で書かれた挿入歌「Bauklotze」を訳していきたいと思います。それでは皆さま、またお会いしましょう。Auf Wiedersehen!