ライター:大柴英斗
ここでは、フランス語で用いられる冠詞についてお話しします。前講で名詞についてお話ししましたが、名詞は基本的に冠詞や形容詞などを伴って出現します。ここでお話します冠詞は、①不定冠詞 ②部分冠詞 ③定冠詞 です。
ちょっと深掘りしたお話なんかもしますんで、初習であんまり自信のない方は、使い方と活用の形だけさらってくださいね。
不定冠詞
英語で言えば”a”にあたります。そうやって考えると、これは新しく話題に上がった名詞に対して使われるというのはすんなり入ってきますかね。形は以下。

例)un avion/des avions 飛行機
une pomme/des pommes りんご
名詞の性別と数で形が変わります。男は男性名詞、女は女性名詞、単は単数、複は複数を表します。形変わるのめんどくさいなー、かもしれませんが、これは逆に捉えれば、冠詞の形から、その名詞の性数が分かるってことです。これ以外と便利だったり。
(ちょっと深い話に移って)
ここで、不定冠詞の本質を考えておきましょう。
不定冠詞の本質は「部分」です。ある総体の中の一つの部分ということになります。これでは堅苦しくてよく分かりませんね。
例えば、「これはなんですか?」と聞かれたときに「これは飛行機です」と答える場合、不定冠詞を使ってC’est un avion と答えます。これは、世の中に存在するあらゆる飛行機のうちの1つという意味で、飛行機という総体の一部になりますよね。これが不定冠詞の表す「部分」です。(少し短い説明なのでわかりにくいかもしれません。混乱しそうだったら一旦忘れちゃってください!)フランス語の冠詞で「部分」というと、「部分冠詞」というものもあります。次は部分冠詞を紹介しましょう。
部分冠詞
部分冠詞は「ある量」を表します。名前の通り「部分」を表します。「え、部分を表すなら不定冠詞と一緒じゃないの?」ってなるかもしれません。
不定冠詞との違いは冠詞の付く名詞の種類です。
不定冠詞は可算(数えられる)名詞
部分冠詞は不可算(数えられない)名詞
につきます。例えば、「牛乳」を差すとき、あの液体を数えることは出来ません。そしてその液体を半分にしたって、「牛乳」であることに変わりないので、これは不可算名詞ですね。(原子レベルまで分解したらもはや牛乳ではないかもしれませんが、そんなのはへりくつ)考え方は英語と同じで良いと思います。
形は以下に示します。

例)du beurre バター
de la viande 肉 de l’eau 水(女性名詞)
数えられない名詞なので複数形はないですね。男性名詞にはdu、女性名詞にはde laです。
注意が必要なのは後ろに母音から始まる名詞が来るとき。男女形ともにde l’ ってなります。エリジオンが起きるわけですね。(エリジオンについてはLeçon1.5で)
※覚え方
男性名詞はduなのに、女性名詞だとde laって二つあってよく分かりませんね。このあと紹介する定冠詞では、男性単数はle,女性単数はlaとなります。これに、deをつけた形が部分冠詞の形です。はて、それでは男性形はde leになるはずですね。フランス語では「縮約」というものが起こります。de+le →duとなるものなのですが、これの詳細はともかく、これと同じことが起きていると考えてみましょう。
男性: de le → du
女性: de la
ということです。こう考えると、後ろに母音が来るとde l’ になるというのもなんとなく納得がいきますね。
定冠詞
英語でいう”the”です。既に話者の間で分かっているモノを差すときなんかに使うのは英語の”the”そのままですね。定冠詞の意味合いとしてはざっと2つ。
・総称
・特定
です。これらの意味はあとで紹介するとして、まずは形からお勉強。

例)le problème/ les problèmes 問題
la chaise/ les chaises 椅子
l’étoile/ les étoiles 星(女性名詞)
単数形は男女別ですが、複数形は一緒です。
るられ、です。るられ、るられって僕は覚えてました。(参考にしなくていいですよ)
注意が必要なのは後ろに母音から始まる名詞が来るとき。単数形は l’ ってなります。エリジオンが起きるわけですね。(エリジオンについてはLeçon1.5で)
(これまたちょっと本質的な話に移って)
まず、総称から。これは今まで述べてきた「部分」と対をなすモノですね。多少の例外を含んでもいいので、とりあえず大雑把に「全部」を表します。例えば、「犬が好き」なんて言いたいときは、“J’aime les chiens” となりますね~。このとき、「犬は好きなんだけど、あそこのお家のめっちゃ吠えてくる犬は苦手なんだよなぁ」的な状態でも、ぼんやり「犬」という総体が好きなら、定冠詞で良いのです。
総称を表すとき、可算名詞には複数形の定冠詞、不可算名詞には単数形の定冠詞を使います。「犬が好きです」なんて言うときに、間違えて“J’aime le chien”ていうと、このchienは不可算名詞のように見えます。不可算名詞の犬、っていうと…犬のお肉みたいになってしまうので注意です…。
次に、特定。これは特に説明しなくて大丈夫だと思います。もう話の中で出てきたモノだったり、「それしかない」モノを指すわけですね。指すものの性数に合わせて定冠詞の形を変えて、使いましょう。
最後に
いきなり色々出てきましたね。これらの冠詞の使い分けっていうのは難しいので、最初から完璧に理解しなくて大丈夫です。中級以上になってきたら徐々になれていけば良いと思います。とりあえずは、
・部分を表す可算名詞は不定冠詞(英語のa的な使い方)
・部分を表す不可算名詞は部分冠詞
・総体や特定を表すのが定冠詞(英語のthe的な使い方)
ということと、それぞれの形だけ覚えておきましょ~!
(それぞれの冠詞について、男性女性単複の表を書いたりしながら、覚えてるか確認したりするとよいかと)
本文中でも書きましたが、性数によって冠詞の形が変わると言うことはつまり、冠詞を見ればその名詞の性数が分かると言うことの裏返しでもあります。名詞を覚えるとき、冠詞とセットで覚えたら覚えやすいのかも…?(筆者は単語単体とその男性女性を分けて覚えちゃったもんで後悔してます)
現時点では、あまり間違える方は居ないと思いますが、この男性女性というのは、「名詞」に依存します。話者には依存しない、つまり「私はマドモアゼルなので、必ず女性形を使いますわ」とかではないので注意が必要です!